J-REITの基礎知識1
の続きとなります。
前回はJ-REITとは何かという事を株式との違いから学びました。
以下にざっくりまとめます。
- J-REITを運営している投資法人は利益の90%超を投資主に分配することで法人税が免除されている
- そのため分配金利回り(≒配当利回り)は高いが、その分、利益の内部留保が少ないため、資金繰りにリスクがある
- 利益の内部留保が少ないため、事業拡張時(新規物件取得時)はPO(新規株式売出)に頼りがち
- 不動産という性質と分配金狙いの中長期投資が主になるため、投資口価格の値動きは株式に比べて緩慢
- しかし、PO発表時は株式と同様 、値動きが大きくなりがち
今回をJ-REITを選ぶ際の指標について学んでいこうと思います。
市場全体を示す指標と銘柄毎の指標があります。
「虫の目と鷹の目」とか「木を見る森を見る」とか言いますが、 大きな観点と小さな観点の両方を見て投資判断することが成功には不可欠です。
失敗ばかりしている私が出来ていないので間違いありません。
市場全体の指標
東証REIT指数
J-REITの全銘柄を対象とした時価総額ベースの指数です。
J-REIT全体の市況はこれで確認できます。
基準日の2003年3月31日時点の時価総額を1000として、その後の時価総額を指数化しています。
また、用途別の指数(住宅指数/オフィス指数/商業物流等指数)もあります。
特化型のREITを検討する際は用途別の指数もチェックしたほうが良いです。
これらは日本取引所グループのHPで以下のメニューより確認できます。
マーケット情報 > 株価指数関連 >
(現在)株価指数リアルタイムグラフ
(過去)株価指数ヒストリカルグラフ
分配金利回りの推移
株式との分配金利回りの差異もチェックすべきとのことです。
J-REIT.jp ※マーケット概況リンクより確認できます
J-REITの平均分配金利回りは2019年6月時点で4.01%、東証一部上場の配当金利回りは2.45%です。
株式と比べ、当然REITの方が利回りが良いはずです。
ただ、両者の差は少しづつ縮まっているようにも見えます。
スプレッド(10年国債利回りとの関係)
J-REITは金融機関からの借入も多くしているため、借入金利が低い方が有利です。
その為、長期金利(10年国債利回り)との関係もよく見られる指標のようです。
こちらもJ-REIT.jpで確認できます。
一般的には3%を下回ると高値警戒感が出てきて、上回ると資金が流入しやすいとのことです。
銘柄別の指標
証券取引会社だと投資口価格と分配金利回りくらいしか確認できなかったりします。
以下で指標を確認できるので銘柄選択の際はIR情報のほか、これらも目を通した方が良さそうです
J-REIT.jp
不動産投信情報ポータル
分配金利回り
J-REITにおいては何といってもこれが一番大事だと思っています。
分配金利回りが高ければそれだけインカムゲインが狙える訳ですし、そうやって買われる事で結果的にキャピタルゲインも得られる可能性があります。
勿論、高い分配金利回りなのにそのまま放置されているのには訳があるはずです。
なんとなくですが、比較的新興のJ-REITは方が高い分配金利回りであることが多いような気がします。
投資対象の違い
どういった物件を運用する投資法人であるか。という要素になります。
様々なタイプの不動産に投資する総合型、ホテル特化、オフィス特化、商業施設特化、物流施設特化などなどいくつかのタイプがあります。
数値化されるものでは無いので指標ではないかもしれませんが、銘柄を選択する際に分配金利回りの次に重要な要素と思っています。
サラリーマンとして働いているので、首都圏のオフィス家賃の値上がりは何となく小耳に挟んでいたりしました。
以前オフィス特化型のJ-REIT(インベスコ)を購入する一つの判断材料にもなりました。
NAV倍率
株式でいうところのPBR(株価純資産倍率)に値する指標です。
1倍を下回れば割安です。
割安だからそれで良いかというとそれだけで単純に判断できない点は株式と同様です。
NAV = 保有不動産の時価総額 – 有利子負債
NAV倍率 = 投資口価格 ÷ 一口当たりのNAV
2019年6月時点ではどの銘柄も1倍前後の数値です。
不動産の安定性を物語っている感じがします。
FFO倍率
株式でいうところのPER(株価収益率)に値する指標です。
不動産における賃貸収入による継続的な利益のみで計算される事が特徴です。(売却の損益は差し引かれる)
こちらも小さいほど割安とみなされます。
FFO = 当期純利益 + 減価償却費 + (売却損 – 売却益)
FFO倍率 = 投資口価格 ÷ 一口当たりのFFO
NOI利回り
NOIとは「Net Operating Income」の事です。
会計で「Net Operating Income」は頻出の単語ですが、私の乏しい経験ではそれをNOIと略すのは聞いたことがありません。
不動産業界の用語っぽいです。
いや、普通に日本語で「営業収益利回り」とかで良く無いか?と思うのですが、アルファベット略称で返って解り難くなるのはどの業界も同じですね。。。
NOI利回り = 営業収益(NOI) ÷ 物件価格
LTV
財政体質の健全性を示す指標です。
各投資法人のサイトを見ると、かなり重視している指標と思われます。
「Loan To Value(Ratio)」の略称で純資産に対する有利子負債の割合を示します。
LTV = 有利子負債 ÷ 純資産
数値が低いほど負債の比率が低いという事になります。
前項でも上げた通り、内部留保の少ないREITは資金繰りにリスクを抱えています。
かつて利益を上げていたにも関わらず資金繰りに失敗し、破綻した投資法人もあった程です。
その為、投資法人がこのLTVの低さをアピールするのも頷けます。(50%未満を指標にする投資法人が多い気がします)
一方でLTVが高ければ高いほど、投資口に対して多くの負債(≒資産)を持っているため、投資口に対して収益性が高い(≒レバレッジが効いている)とも言えます。
また、内部留保の少ない投資法人が不動産を購入する際は PO(増資) の他、借入金も組み合わせていくことになります。
つまり、そもそも投資法人は
- LTVが上昇していく体質を持っている
- LTV増加の場合を抑えるために増資(PO)を行う
と言えることとなります。
借入金(=LTV)が増加推移であれば近いうちにPOを行う可能性も否定できません。
POの抽選に当たれば安く仕入れられますし、大抵短期的には値下がりするのでPO直前の購入は出来れば控えたいです。
LTVは現在の数値だけでなく、前後の推移も含めて確認すべきとのことです。
まとめ
ちょっと多くなっちゃったので表にします。
市況全体の指標
東証REIT指数 | J-REITの全銘柄を対象とした時価総額ベースの指数 |
分配金利回りの推移 | 株式との分配金利回りの差異 近づくとREITは割高 |
スプレッド | 10年国債利回りとの関係 3%より上でREITへ資金流入の傾向 |
銘柄別の指標
分配金利回り | なんだかんだいって一番大事 |
投資対象の違い | 安定の総合型か特化型か? |
NAV倍率 | ≒PBR(株価純資産倍率) 投資口価格に対する資産の割合 |
FFO倍率 | ≒PER(株価収益率) 投資口価格に対する賃貸収入の割合 |
NOI利回り | =営業収益÷物件価格 不動産の賃貸収益性を表す |
LTV | =有利子負債 ÷ 純資産 資産に対してどれ程の負債を抱えているか |
おわりに
J-REITはまだ歴史が浅いせいか、情報としては株式よりもだいぶ少ない感じがします。
ただ、投資対象としては投資口価格の安定性や高い分配金率などから、個人投資家の手の出しやすい金融商品かと思います。
また、NISAとの相性も悪くないです。
私はNISAについては再投資型の投資信託で複利の恩恵を受ける方が良いと思っていますが、やはり分配金が振り込まれて不労所得が得られるというのはビギナーには嬉しいものです。
不動産投資の入り口としても手軽に出来て良いのかもしれません。
株式投資に比べてキャピタルゲインは狙いにくいですが、J-REITもかなり魅力ある投資対象だと思います。
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