職場の先輩に勧められて「モモ」を読みました。
中学生くらいのときに読んだような気がするのですが、完全に内容は忘れていました。
モモは人生の「時間」の捉え方、使い方をテーマにした児童文学です。
改めて大人になって読むと深い学びがありました。
「チーズはどこへ消えた」などの物語形式のビジネス書が好きな方には特にオススメです。
あらすじ
世界観と主人公モモ
物語の舞台は近代っぽい都会の待ちが舞台です。
主人公のモモは身寄りのいない子供なのですが、道路掃除夫のベッポと観光ガイドのジジという親友がいます。
モモは人の話を聞くのが上手く、モモに相談を聞いてもらうと自らの言葉から答えに辿り着くことができるというすごい特技を持っています。
モモの友人たちは貧しくも時間にはゆとりがあり、大人たちは仕事に哲学や誇りを持っていました。
また、子どもたちも想像性豊かにモモと遊んで暮らしていました。
そんな生活に時間どろぼうという悪が街に蔓延りはじめます。
時間どろぼう
時間どろぼうは言葉巧みに人々から時間を盗む存在です。
子供に構う時間や老いた親の世話、散歩など、数値化ができないが心を豊かにしている時間。
時間どろぼうはこういったことに割く時間を正確に計算し、どれだけ無駄なことに時間を使っているかと、相手に提示します。
そして、これらの時間をすべて倹約させ、その時間を奪います。
時間どろぼうはこの奪った時間で生きていて、時間を奪われた人々はより少ない時間で成果を出すために忙しく働く時間倹約家となってしまいます。
「モモ」は時間どろぼうからこの時間を奪い返す物語です。
印象に残ったシーン
私が特に印象に残ったシーンを解釈は入れず、原文のまま載せます。
道路掃除夫ベッポが仕事について語る場面
「とっても長い道路を受け持つことがよくあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」
「そこでせかせか働きだす。どんどんスピードを上げてゆく。ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息が切れて、動けなくなってしまう。こういうやりかたは、いかんのだ。」
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?次の一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
モモ 第四章 無口なじいさんとおしゃべりな若もの
親友含め自分以外の人全員が時間倹約家になってしまったモモの心境
モモはまるで、はかり知れないほどの宝のつまったほら穴にとじこめられているような気がしました。しかもその財宝はどんどんふえつづけ、いまにも彼女は息ができなくなりそうなのです。出口はありません!だれも助けに入ってくることはできず、じぶんが中にいることを外に知らせるすべもありません。
※注釈:財宝 = 時間 です~中略~
いま彼女が身をもって知ったこと。それは、もしほかの人びととわかちあえるのでなければ、それを持っているがために破滅してしまうような、そういう富があるということだったからです。
モモ 第十六章 ゆたかさの中の苦しみ
時間が死んだ人の末路「致死的退屈症」について
はじめのうちは気のつかないていどだが、ある日きゅうに、なにもする気がしなくなってしまう。
何についても関心が持てなくなり、なにをしてもおもしろくない。だがこの無気力はそのうちに消えるどころか、すこしずつはげしくなってゆく。
日ごとに、週をかさねるごとに、ひどくなるのだ。気分はますますゆううつになり、心の中はますますからっぽになり、じぶんにたいしても、世の中にたいしても、不満がつのってくる。
そのうちにこういう感情さえなくなって、およそなにも感じなくなってしまう。
モモ 第十九章 包囲のなかでの決意
「モモ」を読んで
機械的な時間と体感時間
この物語は、機械的な時間と人の体感する時間は全く別物だということを思い出させてくれます。
重要なのは自身が感じる体感的な時間です。子供の時はそれができていたように思います。
(何時になったら食事、寝る。そんな親の言いつけ聞きませんでしたよねwうちの子もそんな感じです)
大人になると、機械的に測れる時間にどんどん囚われてしまいます。
正確な時間管理は生活を豊かにする為の道具であって、それに囚われて支配されてしまうのは本末転倒ですよね。
しかし「時間がない」「忙しい」こういった言葉を、何かをやらなかったり、自分が幸福でないことを主張する言い訳に使いがちです。
とはいえ、社会は時間の規律に厳しいルールで動いています。
いつでもあっさりと機械的な時間に囚われてしまうでしょう。
そういうとき、「モモ」の物語をふと思い出して自分の心の時間に戻れたら良いですね。